報告:『被災者主体のボランティアコーディネーションのつどいin沖縄』
『災害ボランティア講座 今私たちにできること』(5/13実施)
ボランティア活動は被災した人々を支える大切な活動です。その思いが被災地の力になるためにも、しっかりと「災害ボランティア」「被災者主体」について理解することが大切です。被災地における災害ボラセンでの実際の支援活動を通して、沖縄県内でも共通理解を図る必要性を感じ、この2つの講座を企画しました。
『つどい』はボランティアコーディネーションに関わる支援者向け、『できること』は、災害ボランティアに関心のある方向けに開催しました。社協、行政、NPO、企業、大学、民生委員、大学生や一般の方など、『つどい』には79名、『できること』には95名が参加し関心の高さを感じました。簡単に報告します。
←講師の長谷部治さん。神戸市協職員。『災害ボランティア活動支援プロジェクト会議』として福島県災害ボランティアセンターに3月より派遣。日本ボランティア・コーディネーター協会理事。
■被災者主体の災害ボランティア・コーディネーションとは
講師の長谷部治さんは、ボランティアコーディネーターは被災者が求める活動を繋げることが大事と話されました。ボランティアの側も、現地が必要とする活動を優先し、自分がしたいことをおいて「どんな活動でもやります」というスタンスが求められ、被災者が望んでいること、必要としていることを起点とすることが話されました。どのような活動にも、被災者の気持ちに寄り添うことが重要で、「泥を見ずに人を見る」という話をされました。
例えば、壊れたものや汚れたものを片付ける作業でも、依頼した被災者にとってはかけがえのないものであり、捨てるしかなくてもつらい気持ちであること、目の前の作業に取り組むだけでなく、その気持ちに寄り添うこともボランティアだからこそできることだと話されました。
■災害ボラセンを協働して運営する意味
また、災害ボラセンは社協が単独で設置するのではなく、基本は協働型でNPOや企業や青年会議所、地域団体等と連携して運営するものであると説明。
社協は住民とともに復興も視野に入れた長期間関わっていく存在であり、様々な外の力を受け入れ、地域につなげていく運営が重要であることも指摘されました。
■各報告者より
『つどい』では、被災地で支援活動を行った以下の方々より、現地での活動の報告をいただきました。
★宮道喜一さん(NPO法人まちなか研究所わくわく)
災害ボランティア活動支援プロジェクトのメンバーとして、4月の初旬の1週間、福島にて市町村ボラセンの物資コーディネートと情報発信をお手伝いした。物品調達は現地調達が原則。会議時に地元の青年会議所にも入ってもらい、準備資金で購入するという流れで取り組んだ。東京から調達してしまうと、現地の製造・小売を圧迫してしまう。地元の業者にお金を払って購入することが大事。地元の物流動かないと倒産する企業増えてしまう。地元でしっかりまわして、経済をまわしていうこと大切。協働型のボラセンだったんだと思う。地元調達がむずかしいもの(PCや形態電話)は経団連を通じて手配した。
★稲垣暁さん(沖縄大学地域研修所 特別研究員)
沖縄大学の学生たちと、4月下旬より岩手県大槌町を中心にボランティア活動を行った。全員が福祉を学びソーシャルワーカー目指す学科の学生。「何かしたい」という思いと、自分たちが支援者になった時を考えて行動。物資仕分け、衣類仕分け、一般物資、NGOと協働で写真の泥おとし、へどろの片付け、避難所での足湯、子どもたちとの遊び…。4つのグループにわかれて活動した。できるだけたくさんの人と話そう。友達をつくって帰ろうを目標にした。仲良くなるにるれて、被災された方から“つぶやき”がどんどんでてくる。つらかった話をしてくれたり…。学生たちは最初は、ともに涙をながし、夕食前のふりかえりのときも泣いていた。3日目から「客観的にみよう。そして自分たちでできること考えよう」という話し合いにかわった。また、理髪店されていた被災者の方がで、避難所の中で散髪する方もいた。じっとしているよりボランティアしたい、できることをやっているときが楽であると言われた。ボランティアすることは心がやわらかくなることなんだと実感した。商店を再開したい人のために学生がのぼりを作った。店や事業主はボラセンにニーズを言いにくい現状、しかし店の復興こそが現地の心のよりどころとなったりもする。
★仲村辰彦さん(八重瀬町社協 ソーシャルワーカー)
4月下旬に福島県田村市災害ボラセンで、ボランティア・コーディネート業務のサポートを行った。田村市は、原発の20・30キロ圏内が市の4分の1を占めるの内陸の町。派遣前はボラセン閉所の準備の支援と聞いていたが、仮設住宅に移るときにニーズ増えるだろうということでで災害ボラセン続行になった。避難所では落ち着きを取り戻しつつあり、通勤・通学も始まり、昼間人口と夜間人口が大きく異なり、ボラセン利用も少なくなっていた。また、九州ブロックからの派遣も終わるため、住民の巻き込みが焦点であると感じた。田村市の春山小での避難所では、都路町の方が普段の班活動を活かして、清掃活動、配膳など自分たちで自主運営している。コミュニティがしっかりしており、人のつながりが生かされていると感じた。今後を見通して、避難所運営を行う行政や自治会とボラセンが情報を共有するための“お便り”を作成したり、住民向けにボラセンの活動やボランティア募集を載せたお知らせを作成・配布した。また、ボラセン運営に誰もが参加しやすいよう、マニュアルなども整備した。避難所でボランティア活動していた地元の方が、災害ボラセンのスタッフとなり、現在雇用されコーディネーターとして活動している。長期的な生活支援とボラセンの方向性を考えさせられた。
★西智子(沖縄県ボランティア・市民活動支援センター)
私は、仲村さんの行く1週間前に田村市災害ボラセンで支援活動を行った。3/12に8000名いた避難者が、会津若松のホテルや旅館に移動され、今は市内の方360名余が避難生活をされている。この移動された方が、現在どうされているのかが気がかり。また、発災後避難所を何度も変わっており、かつ原発事故のため先が見えない。「自分で選べない」という状況のなか、小さなことでも「選べる」状況、自分の生活をコントロールできることがとても重要だと思う。物資の提供一つにしても、そのような視点での支援が必要だと感じる。コミュニティがしっかりしていても、地縁関係だからこそ言えないニーズもあり、やはりボランティアの存在は重要である。避難所には介護ルームあるが、班組織から離れているため、住民の助け合いの輪から忘れられがち。ボランティアが寄り添うことで、3週間お風呂に入れていなかったり、おかゆしか食べていない状況を徐々に話してくれたり、介護放棄の恐れなどを察知できた。発災後、ずっと支えていたのは地元の学生や若いボランティアの人達。住民の「暇だ」「もっと体を動かしたい」という声から、「ボランティアがやりすぎない」「巻き込む」などの意見も交わされた。「みんなで花壇づくりをしてはどうか」という学生の提案が、自治会、青年会議所の協力で実現。花壇づくりでは住民がベテランで、ボランティアの方が教えられた。私が行ったクールでは、ボランティアの朝夕のミーティングを定着させ、気づきや課題を共有し一緒に考えていくような形づくりを意識した。仲村さんの行った1週間後には、学生たちや地元の若い人がリーダーになっていた。人が育つスピードを感じた。そして地元のボランティア達の継続的な活動があるからこそ、県外からくる単発的な活動や専門性のあるボランティアが活かされている。
■参加された方の声
参加者からは、「ボランティアであるからこそ、現地の“人”を見て、その方々の誇りを大切にしないといけない」という感想も寄せられました。
【社協の職員より】
・①被災地のニーズは時が経過するにつれ多様化しているので情報をきちんと得る。②被災者の思いやタイミングを考えた支援の実施。③様様な情報発信の機会をつくる。
・被災地域が、いち早くて通常の生活に戻れるように、地元市民を中心にした。経済や生活支援を大半にコーディネートすること。
・被災者主体という言葉は、被災者の真のニーズをキャッチしてボランティアとつなげる役割をボランティアコーディネーターは担うという意味と、被災者自身が主体となる、活動できること(ボランティアとして)を考えることが大事だという意味である。
・まず被災地の情報をちゃんと知って、時間の流れと共にニーズも変化していることを知ること。そして、ボランティアへ理解してもらい現地へいく事。
・多様な【学生・行政・社協・生協・企業・NPO】方々の参加によって同じ時間を共有できたことがとてもよかった。
【行政の方より】
・自分たちの町には何が不足しているか改めて考えさせられる会でした。地域性の結束力だけでなく外部との協調性も重要だと思いました。
・行政側(県庁 防災危機管理課 海岸防災課 県民生活課)を含めてトータル的な避難所運営、ボランティアコーディネートの在り方についてついて話してみるのも良いと思います。
・ニーズをつかむことの大切さ、つなげる事の難しさをかんじました。個別支援「May I Help You」という言葉がとても印象的で今後、支援をしていく上で頭に入れておきたいとおもいます。
【NPOより】
・被災者の目線に立ってボランティア活動にあたること、また、する・されるではなく一緒にやるという事が大切であると思います。
・2つの講座を通して、「被災者主体」をキーワードとした災害時のボランティア活動やボランティアコーディネーションに必要な視点や取り組み方について共通理解を図ることができたのではないかと思います。今後も、支援したい人々の思いが、被災された方々のニーズとあった活動として展開されるよう、息長い支援が必要だと感じています。
【企業の方より】
・ボランティアをやってあげるという押し付けにならないようにしなければいけないと改めて思いました。「ガレキではなく誰かの財産だった物」という言葉が心に残りました。
【施設関係者より】
・「被災地にはガレキは一つもない」(すべて誰かの財産だった。)という言葉は胸にささりました。
・被災者の方々が今何を必要としているのかをつかむ力
【大学生】
・全ての事が勉強になりました。継続的にこういった会をもってほしいと思いました。
【個人の方より】
・災害の状況により被災者が欲するボランティア内容が違うのでコーディネーターの力量が問われる。
・冷静さと全体や個々の方々の状況、思いに目と心を向ける意識